首の痛みに対する鍼灸の効果|鍼灸師が解説!

首の痛みは、デスクワークやスマホの使用、ストレスなど日常生活の中で誰もが経験しやすい症状です。慢性的なこり感から、寝違えのような急性の痛みまで幅広く、放置すると肩こりや頭痛、自律神経の乱れにまでつながることもあります。鍼灸は、こうした首の痛みに対して、即効性と再発予防の両面からアプローチできる有効な治療法です。
首の痛みの症状と特徴を理解する
- 首のこり感や鈍痛が続く
- 急に首を動かすと痛みが走る(寝違えなど)
- 首の動きが制限され、後ろを振り向けない
- 肩や背中、頭まで痛みや重だるさが波及する
- ストレスや疲労がたまると悪化しやすい
首の痛みの原因と発症メカニズム
- 筋肉の緊張と血行不良
長時間の姿勢不良や疲労により、僧帽筋・肩甲挙筋などが硬くなり血流が低下。 - 頚椎や関節の機能低下
加齢や使い過ぎで頚椎の柔軟性が低下し、可動域が狭くなる。 - 自律神経の乱れ
ストレスや不安によって交感神経が過剰に働き、筋緊張が慢性化。 - 神経の圧迫
頚椎症やヘルニアなどにより、神経根が圧迫されて痛みやしびれを伴うことも。
鍼灸治療が首の痛みに効果を発揮するメカニズム
- 筋肉の緊張緩和
硬くなった首周囲の筋肉に直接アプローチし、こわばりや痛みを和らげます。 - 血流改善
鍼刺激によって局所の循環を促進し、疲労物質や炎症物質の排出を助けます。 - 内因性鎮痛機構の活性化
エンドルフィンなどの鎮痛物質を分泌させ、痛みの感じ方を抑制します。 - 自律神経のバランス調整
過剰な交感神経の働きを抑え、リラックスしやすい体内環境を整えます。
現代医学からみた鍼灸治療の効果
首の痛みに対する西洋医学的アプローチは、痛み止め・筋弛緩剤・理学療法などが中心です。
一方、鍼灸は「非薬物療法」として神経・筋・血流に同時に作用し、根本的な改善や副作用の少なさが評価されています。慢性症状や薬が効きにくい方にとって、有効な選択肢となります。
科学的研究からみる鍼灸の効果
慢性頚部痛に対する鍼治療の有効性(ドイツ・2015年)
- 対象:慢性頚部痛患者204名
- 結果:鍼治療群は通常治療群に比べ、痛みの軽減および生活の質の改善が有意に高かった
- 引用:Witt CM et al., “Acupuncture in patients with chronic neck pain”, Pain, 2015
電気鍼と通常鍼の比較研究(中国・2020年)
- 対象:頚部筋筋膜痛症候群の患者120名
- 結果:電気鍼治療群は、疼痛スコアと頚部可動域の両面で改善効果が高かった
- 引用:Zhang Y et al., “Comparison of electroacupuncture and manual acupuncture for cervical myofascial pain”, J Tradit Chin Med, 2020
鍼灸治療の禁忌と注意点
- 明らかな骨折や脱臼、強い炎症がある場合は整形外科での治療が優先されます
- 頚椎ヘルニアや脊髄疾患が疑われる場合は、まず医師の診察を受けてください
- 糖尿病や高血圧などの既往がある方は、刺激量を調整しながら慎重に施術を行います
当院での首の痛み治療の実際
局所治療:首や肩、肩甲骨周囲など痛みや緊張が強い部位に鍼刺激を行い、筋肉を緩めます。
全身治療:首や肩だけでなく、背中や腰など関連する筋肉の緊張を和らげることで頚部への負担を軽減します。また、自律神経や血流のバランスを整えることで、体全体の回復力を高め、症状の再発予防につなげます。
耳介療法(BFA®または各種耳鍼療法):頚部の慢性痛や自律神経の不安定さに対して、持続的な刺激により痛み止めに似た効果が期待できます。特に「ASPを使用したBFA(戦場鍼)」は、継続的な緩和と心身の安定に有効です。
私見:慢性的な首の痛みには、首そのものだけでなく、身体全体の緊張やストレスが関与していることが多く、耳介療法(BFA®等)の併用により改善率が高まると感じています。


首の痛みは、医師による同意書が発行された場合、療養費制度を利用して鍼灸治療を受けられる可能性がございます。
鍼灸治療の可能性と未来
首の痛みは、一時的に緩和しても再発しやすく、放っておくと慢性化や関連症状を招きます。鍼灸は、そうした「繰り返す首の痛み」に対して、根本から整え、再発予防まで目指せる治療法の一つです。
自然な方法で首の不調を改善したい方は、ぜひ一度鍼灸を体験してみてください。
