三叉神経痛に対する鍼灸の効果|鍼灸師が解説!

三叉神経痛は、顔の片側に突然鋭い痛みが走る非常につらい神経疾患です。日常生活にも支障をきたすことが多く、薬物治療だけでコントロールしきれないケースもあります。そんな三叉神経痛に対して、鍼灸治療は自然な方法で痛みを和らげる選択肢として注目されています。
三叉神経痛の症状と特徴を理解する
三叉神経痛は、顔面に分布する三叉神経のいずれかの枝(眼神経・上顎神経・下顎神経)が刺激されることにより、発作的な痛みを生じる疾患です。
- 発作的に鋭く突き刺すような痛み
- 洗顔・歯磨き・風に当たるなど軽い刺激で誘発
- 片側のみの症状が多い
- 痛みの持続は数秒~数分程度であるが、頻繁に繰り返す
- 痛みの強さにより日常生活に支障をきたす
三叉神経痛の原因と発症メカニズム
- 神経血管圧迫:脳内で血管が三叉神経を圧迫し、神経過敏を引き起こす。
- 帯状疱疹ウイルス感染後:ヘルペスウイルスの再活性により神経が障害される。
- 神経の脱髄・炎症:多発性硬化症やその他の神経疾患が関与することも。
- 歯科疾患・顎関節症などの関連痛:原因部位と誤認しやすい。
鍼灸治療が三叉神経痛に効果を発揮するメカニズム
- 神経の興奮を抑制:鍼刺激が神経伝達の過剰な興奮を鎮める。
- 内因性鎮痛物質の放出:エンドルフィンやエンケファリンの分泌促進により痛みを緩和。
- 局所血流の改善:筋緊張や炎症による血行不良を改善し、神経圧迫を軽減。
- 自律神経のバランス調整:副交感神経の働きを高め、神経過敏状態を穏やかにする。
現代医学からみた鍼灸治療の効果
三叉神経痛は、カルバマゼピンなどの薬物治療が第一選択とされていますが、副作用や効果減弱により中止を余儀なくされることもあります。鍼灸は非薬物療法として、痛みの軽減・発作頻度の減少に寄与する可能性があり、薬物に頼らない補完医療として注目されています。
科学的研究からみる鍼灸の効果
三叉神経痛に対する鍼治療の有効性(中国・2017年)
- 対象:三叉神経痛患者80名
- 結果:鍼治療群は鎮痛薬群に比べて発作回数が有意に減少し、生活の質スコアも改善
- 引用:Zhou M. et al., Acupuncture treatment for trigeminal neuralgia: a clinical trial, J Tradit Chin Med, 2017
鍼+電気刺激療法の併用効果(韓国・2020年)
- 結果:電気鍼治療を受けた群では、3週間後にVASスコアが有意に低下し、再発率も低かった
- 引用:Kim JH. et al., Efficacy of electroacupuncture for trigeminal neuralgia, Korean J Pain, 2020
鍼灸治療の禁忌と注意点
- 原因が腫瘍や脳の器質的疾患による場合は、必ず医師の診断と併用が必要です
- 神経痛が突然悪化した場合や感覚麻痺を伴う場合は、すぐに専門医へ受診を
- 感染症や強い皮膚炎が顔面にある場合は施術を控えます
当院での三叉神経痛治療の実際
局所治療:痛みの出る顔面部位の関連点に微細な鍼刺激を加え、神経の興奮を鎮めます。
全身治療:首肩の筋緊張を緩和し、血流や自律神経のバランスを整えることで、全身の回復力を高めます。
耳介療法(BFA®又は各種耳鍼療法):三叉神経と関連する耳のツボを用い、持続的刺激で痛みの閾値を調整します。特に「ASPを使用したBFA(戦場鍼)」は、即効性と持続効果が期待できます。
私見:私自身、薬物療法では改善が難しい患者さんに対して、耳介療法(BFA®)と顔面部への極細鍼を併用した結果、痛みの頻度や強度が著しく軽減した例を複数経験しています。


鍼灸治療の可能性と未来
三叉神経痛は、精神的ストレスや睡眠不足によっても悪化しやすく、慢性化しやすい疾患です。鍼灸治療は、薬に頼りすぎることなく、自然治癒力を高めることで根本的な改善を目指せる方法です。副作用が少なく、継続的なケアが可能なため、特に長期的な視点での治療をお考えの方におすすめです。
お顔の激しい痛みにお悩みの方は、ぜひ一度ご相談ください。鍼灸で穏やかな日常を取り戻しましょう。
